天国と現世のコラボデザイン

毛越寺庭園

平安時代の著名な庭園といえばほとんどが京都周辺に点在しているが
岩手県平泉に浄土式庭園の傑作といわれる毛越寺(もうつうじ)庭園がある。
(最近世界遺産に登録された)
この時代は末法思想(仏の教えが通用しなくなる)がおこり、阿弥陀如来のいる極楽浄土への往生を願う浄土信仰が広まった
そしてこの極楽浄土の世界を取り込もうとしたのが浄土式庭園である。
曼荼羅(九品往生図)に描かれた楼閣、蓮池の世界が浄土のイメージだと思われるが、ただ単にその世界を真似するのではなく当時公家に人気の住宅形式である寝殿造りデザインを取り入れたところが面白い。
というより寝殿造りがベースにありそこに極楽浄土の要素を取り入れたといった方が正しいのかも知れない
寝殿造りとは寝殿と呼ばれる中心的な建物が南の庭に面して建てられ、東西に対屋(たいのや:家族の住むスペース)を配し、それらを渡殿(わたどの)でつなぎ、更に東西の対屋から渡殿を南に出してその先に泉殿、釣殿を設けたものである。
寝殿前には広場がありその先に池を掘り、中島を配しそこに橋をかける。池には龍頭鶏首という二隻の船を浮かべて遊宴したらしい。
毛越寺庭園では池を蓮池に見立て、寝殿を金堂として仏像を安置し、泉殿を経楼、釣殿を鐘楼などとしたのである。
まさに天国(理想郷)と現世のコラボデザインである。

建物は失ったが庭は残った。庭を見ながら建物を想像する
完成された庭を見るより面白いかもしれない。
そしてこの庭園は作庭記を忠実に実現した要素が多い庭でもある


毛越寺復元模型

浄土式庭園は奈良の円成寺も有名である 
3Dモデル動画


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