鷲が見続けてきたもの

=====ゲニウス・ロキ======

先日、ある講座に参加して興味ある言葉に出会った。ゲニウス・ロキ[genius loci] という言葉である。
どうやら古代ローマ人が取り憑かれた観念で、ゲニウス(守護霊)とロキ(場所の)というラテン語が語源とのこと。 それぞれの場所にひそむ“地霊”の力のようなものをさしている。場所の安定性、土地の個性といった感じらしい 。
中村雄二郎は「ゲニウス・ロキは、それぞれの土地がもっている固有の雰囲気であり、歴史を背景にそれぞれの場所がもっている様相である」と説明した。講座では「積み重なった土地の記憶」という表現をしていた。
ZERO・SQUAREというコラムで日本橋の例を挙げたがまさしく「積み重なった土地の記憶」という観念が当てはまると感じた 。
開発には今まであったものを壊すというイメージがある 。新しくマンションが建ちそこに人々が住み始めるがほとんどの場合新住民は以前そこに何があったのか知らないでいる。そして風景がどんどん変化していく 。
このスピード、サイクルが激しく人々は翻弄され続ける社会の変化に伴い開発していくことは必要であるが やはり積み重なった土地の記憶を呼び起こすよりどころのようなホッとする場所を築いていく必要を感じる。
開発という行為は過去を破壊して行うものではなく過去を尊重して行われるべきだと感じる

日本橋と高速道路の問題で高速を地下化するより日本橋を移設しようという意見がある
私はこの意見には反対である。 ゲニウス・ロキという概念からすれば日本橋はその場所にあるから日本橋なのである 。ほかの場所に移せば博物館に展示された日本橋の模型と同じである。
文京区にある元町公園を移設する計画がある(2006/6時点) 元町公園は震災復興公園として設置された52箇所の小公園の一つである これらの小公園は学校とペアで配置されているのが大きな特徴で
狭い校庭に公園を隣接することで児童の体力づくりに役立ちまた地域に小学校をより認識させるといった狙いがあったように思う。
そしてこの元町公園は震災復興公園の中でも唯一開園当時の面影を残している公園で段差のある地形により園内にはカスケードや壁泉などがあり現存する他の復興公園に比べるとデザイン的にもかなりユニークな存在となっている 。
計画は公園を隣接地(小学校のある場所:学校は統廃合で廃校)に移設し大通りに面している元町公園に総合体育館を建てるということである。
この計画は総合体育館の具体案がなく公園の移設だけを先行させたいという区の説明に一部住民が難色を示しているらしい。(もっともだと思う)
私は単に公園を移せばいいだろうという考え方には疑問である。 かといって公園は絶対保存すべきだとも言い難い。 例えば総合体育館ロビーに元町公園のイメージ(カスケード、壁泉)をうまく取り入れそれが連続して背後のオープンスペース(公園)に繋がっていくような感じになればいいなと思う。
利用者が以前はこんな感じの公園がここにあったなあと思い出せる空間になってほしい。
単純に経済性と機能性を求め元町公園のイメージとは何の関連性もない体育館と公園が出来るのだけは避けたい。

この元町公園の角に何故か柱が立ちあがってその上に鷲(彫刻)がいる。
この鷲は何十年もこの「場」を見続けてきた
これからも見続られる場所にいて欲しいと願っている。
元町公園

[追記]
この公園は人気テレビドラマ「JIN」の最終回でロケ地として利用されました。
(仁が咲さんからの手紙(○○先生へ)を読むシーン)

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