最近サウンドスケープという言葉をよく聞く。
「サウンドスケープ」という言葉は、環境の中における音の存在を表現するものして提唱された言葉ということである。 scapeは「~の風景」という意味であるから直訳すれば「音の風景」ということになる。
川のせせらぎが流れる音、滝の落水音、木々でさえずる野鳥の泣き声、朝夕のヒグラシの泣き声、茂みから聞こえる鈴虫の音色、風にそよぐ葉の音、雨の音、風の音、雷鳴・・・ 考えて見れば造園(景色)と音は切っても切り離せない関係のように思える。
日本庭園では水琴窟(すいきんくつ)という蹲(つくばい)の仕掛けがある 。蹲は手を洗う場所で下に洗った水が溜まらない様に桝のようなものを設ける訳だが ここに瓶をさかさまに埋め込み上にあけた小さな穴から水滴が下に溜まっている水面に落ち その時瓶の内部で反響するわずかな水音を楽しむという粋な仕掛けである。 江戸時代には各地で庭師により盛んにつくられたようだ。
残念ながら中に泥などが溜まりやすく、いい音色はしだいに出なくなり衰退してしまったらしい。
しかし近年テレビで紹介されたことがきっかけで水琴窟が再び脚光をあびているようだ。東京付近でも数箇所でこの水琴窟の音色を聞くことができる。 ただ周辺の騒音の影響でこのわずかな水音を聞きとるのは難しく 竹の筒などを水穴に向け竹筒に耳をあてるというスタイルで聞くことになる。
しかしこの方法だと水音は確かに聞こえるのであるが筒の内部からゴーという音もいっしょに聞こえてきてちょっと気になる 。水琴窟の前で跪いて耳を直接水穴に近づけて聞くと音はクリアに聞こえるがちょっとつらい姿勢である。
騒音が少なかった江戸時代ではこんなスタイルはとらなくても 蹲のそばにいればこのわずかな水音が楽しめたのであろう。 その静けさが辺りを包み込んでいる空気感の中でこの音が聞けたら最高だなと思う。
水琴窟は音といっしょに静かさを楽しむ装置だったのではないだろうか。
「古池やかわず飛び込む水の音」という句もその静かな空気感が伝わってくる。

水琴窟のある蹲
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