七難八苦の樹木

========街路樹の話========
街路樹の歴史は古く奈良時代までさかのぼるようだ
当時は都大路に柳を植えたり、街道に果樹を植えていたらしい
その後室町時代には街道に一里塚が設置されるようになり江戸時代には全国に広められ、街道沿にも松、杉の並木が植えられた。
市街地の道路並木が植栽されたのは明治になってからと言われているが銀座の煉瓦通りでは歩道ではなく車道側に植えられておりまた樹種も統一ではなく多様な樹木が列植された。
参考:街路樹の歴史東京都建設局
銀座通り煉瓦石の図(広重三代)

銀座通りの街路樹(車道側に植樹)
現代の街路樹は非常に厳しい環境の中で必死に生きている。電線に当たりそうな枝、信号が見えにくくなるような枝は容赦無く切り落とされ、管理費用の節約による強剪定で丸太のようにされてしまう。歩道の舗装材を破壊する悪者にされたり、毛虫等のクレームの標的にされる、また街路灯の灯りや電飾で夜も寝かせてもらえない。そして常に排気ガスにさらされる。看板などが巻きつけられたりすることもある。車の出入の邪魔であれば伐採される。落ち葉は嫌われ、イチョウなどは車のスリップの原因になると非難される。常緑樹であれば日当たりが悪くなると攻撃される。根は猫の額ほどの狭い植栽桝に押し込まれ、十分な水分、養分も吸収できない。最近は除草対策の為か植栽桝を透水性の舗装で固めているものもあるがそのうち目詰まりして透水機能が失われてしまうであろう。
こんな状態では健全な生育など望めるはずもなくただひたすら耐え偲ぶように生きているのだ。
先日(2014・2・17)家の前で耐え偲ぶように生きてきた街路樹(プラタナス)が伐採された。生育不良のため撤去しますといった表示が近くの街路樹に貼られていたので私はその木だけが伐採されるのかと思っていたら沿道のすべてのプラタナスが伐採されてしまったのである。せめて沿道の住宅等にはちらしでも配布すべきだと思う。この木は夏場西日を遮ってほどよい緑陰を窓辺に作り出してくれていたので非常に残念である。
幼い頃から植えられていた思い出深い街路樹だったので伐採している業者の方にお願いして幹を長さ60cm程度にカットして譲ってもらった。目通りは70cm程度、プラタナス特有の樹肌の模様が美しい。年輪を見ると植栽時目通り20cm内外とすればその後50年以上経過していると思える。植えた頃は年輪の幅も2-3mm程度あるが最近のは1mmにも満たない。かなりきびしい生育状態であったことが想像できる。
伐採されたプラタナスの幹と年輪
管理者に問い合わせてみるとモッコクに植え変えるとの返答があった。モッコクは常緑で大木にはなりにくいので管理上は都合がよいのであろうが季節感は乏しく、成長しても西日を遮るほどの緑量は期待できないのである。
都は街路樹倍増計画などを打ち出しているがプラタナスをモッコクに変更していたら本数は倍になっても春~秋の緑量は半分以下になってしまいそうである。
ちなみに平成23年の東京都内の街路樹は約70万5千本で内訳は以下のようになる。(カッコ内は平成18年の本数)
  1. イチョウ:62(63)千本
  2. ハナミズキ:60(57)千
  3. サクラ(ソメイヨシノ):32(41)千本
  4. トウカエデ:28(37)千本
  5. スズカケノキ(プラタナス):23(36)千本
  6. ケヤキ:22(30)千本
  7. クスノキ:10(20)千本
  8. マテバシイ:10(17)千本
  • その他:467(185)千本

平成18年と平成23年ではベスト8の樹種は同じであるが本数は減っている。しかしその他がかなり増えて全体の7割近く占めている。多様性という意味ではよいと思うが前述したように緑量の少ない(コンパクト)樹木の割合が多くなっているのであろうか?
管理上はコンパクトな樹木が有利で、樹木に負担をかける事も少なくなるのかもしれない。
冒頭で紹介した銀座煉瓦街の街路樹は今は高さ2mほどのイチイになっている。管理も容易で車道から看板なども見やすいと思うが私には街路樹というよりストリートファニチャーに見えてしまう。
この通りは電柱もなく歩道幅員も広いのでもっと緑量のある街路樹にして表参道のような日本を代表する緑豊かな通りになって欲しいと思うのだが。

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